規定投球回が必要なわけ
プロ野球では、投手が賞を受賞するために必要な最低限の投球回数が設定されており、これを規定投球回と称しています。この場合の投手賞は、主に「最優秀防御率」を指しますが、それには理由があります。
例として、以下の2人の選手を想定してみましょう。
・A選手:たった1回投げて防御率0.00
・B選手:153回投げて防御率2.50
規定投球回という基準が存在しない場合、実際にはほとんど投げていないA選手が最優秀防御率賞に輝くことになります。
このような状況を避け、公平性を保つために、規定投球回という基準が設けられています。
規定投球回数は一軍と二軍で違う
日本プロ野球(NPB)の規定投球回数
一軍:所属チームの試合数 × 1.0
二軍:所属チームの試合数 × 0.8
そうした事情から、一軍と二軍の間で規定投球回数の基準は異なっています。
また、各年度の試合数に応じて規定投球回数も変化することがあります。
特に、2020年は新型コロナウイルスのため試合数が縮小され、それに伴い投球回数も減少することとなりました。
2021年度は試合数が143だったので規定投球回数も143回
メジャーリーグ(MLB)の規定投球回数
ア・ナ両リーグ:所属チームの試合数 × 1.0
メジャーリーグでも、だいたい日本と同じようなやり方で規定投球回数を決めています。
ただ、メジャーリーグの試合数は日本プロ野球より多いので、規定投球回数もそれだけ多くなります。
2021年度は試合数が162だったので規定投球回数も162回。日本より試合数が多いですね!
エンゼルス・大谷翔平投手がメジャー5年目のシーズンを終え、先ほど帰国しました🛩
— Full-Count フルカウント (@Fullcountc2) October 18, 2022
今季は15勝&34本塁打をマーク。メジャー自身初の規定投球回に到達し、ワールドシリーズが始まった1903年以降では史上初の「ダブル規定」を達成。MVPに輝いた昨季に続き、投打でフル回転でした。
お疲れ様でした❗️ pic.twitter.com/1rOGAkqyl2
規定投球回の達成は難しくなった
規定投球回数をクリアする投手は減りつつあります。
試合に勝つために投手も分業制(中継ぎ・リリーフ)が重視されるようになり、加えて先発投手が完投するチャンスの減少と強力なエースがメジャーリーグに挑戦して日本プロ野球を離れることも影響しています。
最近の規定投球回数達成者数は以下の表にまとめられています。
年度 | セ・リーグ | パ・リーグ |
---|---|---|
2012 | 20人 | 13人 |
2013 | 17人 | 12人 |
2014 | 15人 | 13人 |
2015 | 14人 | 12人 |
2016 | 12人 | 14人 |
2017 | 12人 | 13人 |
2018 | 8人 | 9人 |
2019 | 9人 | 6人 |
2020 | 6人 | 8人 |
2021 | 9人 | 14人 |
2022 | 10人 | 9人 |
規定投球回数を達成するには?
規定投球回数をクリアするには、どの程度のペースで投げなければならないでしょうか。
通常、先発投手は1週間に1回ほど登板します。
現在のプロ野球では、6人の先発投手でローテーションを組むのが普通です。
ローテーションを維持できる投手は、ざっくり計算すると年間24試合(143試合÷6)くらいに登板します。
規定投球回数を超えるには、24試合で1試合あたり6イニング(143回÷24試合)をシーズンを通して投げ続けることが必要です。
短いイニングでノックアウトされたり、二軍に降格したり、怪我で離脱したりすると、規定投球回数を達成するのは非常に難しくなります。
なお、1イニングだけ投げるリリーフ投手の場合、全試合に登板する必要があります。
リリーフ投手が規定投球回数を達成することは、ほぼ不可能と言えるでしょう。
まとめ
近年、規定投球回数をクリアできる投手は稀少となっています。
そのため、優れた投手がわずかに規定投球回数に届かないために、防御率が適切に評価されにくくなっています。
最近、新たな基準として「トップリーグやメジャーリーグで規定投球回を試合数の80%に設定すべき」という提案も出されています。
しかしながら、その厳しい状況下で規定投球回数に到達する投手は、その実績だけでも高く評価されるべきと考えられます。